ノーベル賞を受賞した非人道的な「ロボトミー手術」

1940年代、ポルトガルの精神病院の廊下で、抑えきれない叫び声がこだましていました。

そこに入院していた女性は、数年前から精神的な不安に苦しみ、度重なる発作に悩まされていました。

医師たちはあらゆる治療法を試しましたが、いずれも効果は長続きせず、彼女の状態は日を追うごとに悪化していきました。

病院は最終的にロボトミー手術を提案しました。

女性の家族はその時代の医療技術に対する信頼から、この手術が娘の唯一の救いだと考えました。

医師も「この手術で彼女は落ち着き、穏やかになるだろう」と楽観的な見解を示していました。

この時期、ロボトミーは精神的な症状を抑えるための革新的な治療法だとされ、多くの医療機関で取り入れられていたのです。

手術の日

手術室に入った彼女は、冷たく無機質な手術台に横たわりました。

室内は静まり返っており、唯一聞こえるのは医療器具を使う音だけでした。

医師は冷静に準備を進め、まるで日常の手術をこなすかのように無表情でした。

彼女の瞳が閉じられ、電気ショックが加えられると、意識が遠のいていきました。

器具がセットされると、わずか数分で手術は行われました。

アイスピックのような器具が目の裏から挿入され、ハンマーで軽く叩かれる音が静寂の中に響きました。

神経が断ち切られる瞬間も、医師の手には迷いはありませんでした。

手術が終わると、医師は家族に「手術は成功です」と淡々と伝えましたが、家族はその言葉に安心しきれない不安を感じました。

表情は穏やかで、一見落ち着いて見える彼女。

しかし、彼女の瞳の奥には、以前の生気が全く感じられなかったのです。

家族の中には、「本当に成功だったのだろうか」との疑念がじわじわと湧き上がってきました。

壊された心の描写

数日後、彼女は家に戻りました。

しかし、家族が期待していたのは「穏やかさ」ではなく、虚無でした。

彼女はただぼんやりと窓の外を見つめるばかりで、かつて大好きだった本を手に取ることもありませんでした。

家族が問いかけても、返事は簡素で、会話を続ける意欲が全く感じられません。

かつての彼女は、冗談を交わし、活発に話す人だったのに、今は感情の波すら見えない人形のようです。

彼女の心が消え去ったかのように。

また、日常生活にも問題が現れました。

食事のタイミングを忘れたり、家の中で迷子になることも増えました。

かつては何気なくこなしていた家事や、趣味さえも全て彼女にとっては苦痛で難解な作業になってしまったのです。

家族は少しずつ、彼女がかつての自分を取り戻すことは二度とないという現実に直面していきました。

無数の犠牲者

彼女のように、ロボトミーの犠牲となった患者は数十万人規模です。

多くの患者が手術によって感情や人格を失い、社会生活に戻ることができなくなりました。

ロボトミー手術を最初に提唱したのは、ポルトガルの神経科医エガス・モニス(António Egas Moniz)です。

彼は1935年にこの手術を考案し、精神疾患の治療法として前頭葉の一部を切除することが、患者の症状を改善する可能性があると発表しました。

モニスの手術は「前頭葉切截術(ロボトミー)」と呼ばれ、彼はこの業績で1949年にノーベル生理学・医学賞を受賞しています。

当初、モニスは手術を行う際にアルコールで神経を破壊する方法を使っていましたが、後に氷や器具を用いた手術が発展していきました。

一方、ロボトミー手術がより広く普及したのは、アメリカのウォルター・フリーマン(Walter Freeman)によるものです。

フリーマンは、ロボトミーを簡素化した「トランスオービタル・ロボトミー」を考案し、アイスピックのような器具を使って目の裏から脳にアクセスし、神経を切断するという方法を開発しました。

この方法は、手術が数分で完了するため、簡易的な手術として多くの患者に施されました。

ロボトミーが導入された初期には、フリーマンが一部のケースで電気ショックを使って患者を麻痺させ、その後に器具を挿入して手術を行ったという記録もあります。

この電気ショックは、痛みを感じないようにするための手段として使用されました

忘れ去られるロボトミー

1950年代後半、精神疾患に対する薬物治療が進化し始め、ロボトミーは徐々に廃れていきました。

現在、この手術は歴史的に非難される医療行為の一つとして、医学界で忘れ去られようとしていますが、かつてその手術を受けた人々の悲劇は消えることはありません。

この過去の失敗から、医療は進化し続け、今日の治療法が誕生しています。

しかし、歴史は忘れてはならないものです。

あなたも、今後の医療の発展に興味を持ち、どのように患者の尊厳を守るか考えてみてください。

未来の医療が、同じ過ちを繰り返さないために…。

ロボトミー手術の話
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