たどり着くまでの長い道のり
メキシコシティのソチミルコ運河に浮かぶ人形島(La Isla de las Muñecas)は、奇妙で不気味な観光地として知られていますが、訪れるのは容易ではありません。
この島に行くためには、まずソチミルコの桟橋から小さなボート(トラヒネラ)をチャーターし、片道約2時間の航行が必要です。
運河は細く入り組んでおり、ガイドなしで進むのは難しいため、地元の船頭に案内を頼まなければなりません。
また、運河には水草が絡まりやすく、時にはボートが進まなくなることもあります。
訪問者は、運河を進む間に少しずつ静寂に包まれていき、まるで別の世界に入っていくような感覚を味わうのです。
島の入り口に立ちふさがる人形たち
ようやく島に到着すると、まず目に飛び込んでくるのは、朽ち果てた無数の人形たちです。
彼らは木々に吊るされ、風に揺れながらこちらを見つめているように見えます。
その多くは片目が失われ、服もボロボロですが、不思議な存在感があり、まるで今にも動き出しそうな気配を漂わせています。
地元の伝承によれば、人形たちは霊の依代として使われており、訪問者の無礼な行動に怒った霊が人形を通して復讐すると信じられています。
そのため、多くの人は人形の前にキャンディーや小さな贈り物を供え、霊をなだめようとします。
ドン・フリアンの孤独な生活
かつて人形島に、一人の男が住んでいました。
彼の名前はドン・フリアン・サンタナ。
彼は家族を離れ、静かな島で孤独な生活を選びました。
ある日、不可解な事故が起こるといわれる誰も近づかない湖へ続く運河で溺れた少女の遺体を見つけます。
少女の傍らには、ボロボロの人形が浮かんでいました。
悲劇に心を痛めたフリアンは、その人形を木に吊るしました。
彼はこうすることで、少女の霊を慰めるつもりだったのです。
人形が増え続ける島
それからというもの、夜ごとに少女の霊の気配がフリアンを襲いました。
「囁き声が聞こえる…」
「夜中に誰かの足音がする…」と。
孤独の中で恐怖に苛まれたフリアンは、運河や街からさらに多くの人形を集めて木に吊るし始めます。
島全体が次第に、まるで人形の祠のように変わっていきました。
彼は「この島を呪いから守るには、人形が必要だ」と信じ、50年もの間、ひたすら人形を集め続けたのです。
しかし、彼がどれだけ人形を吊るしても、少女の霊は島を離れることはありませんでした。
呪われた最期
2001年、フリアンは運河の岸辺で謎の死を遂げます。
それは、かつて少女が溺れたとされる場所と同じ場所でした。
島に残された数百体の人形は、今も彼の死の謎と共に、訪れる者たちを見つめています。
不気味な体験と帰りの道
島では、しばしば人形の目が動くように感じたり、誰もいないはずの場所から囁き声が聞こえると報告されています。
訪問者の多くは「その場に長くいると何かに取り憑かれる」と感じ、長居を避けるようにしているのです。
また、帰りの航路も簡単ではありません。
島を離れた後も、風に乗って不気味な声が追いかけてくることがあると言われています。
「囁き声が近づくとき、あなたを狙った霊が後ろにいる…」
それが、この島の最後の警告です。
警告と最後のアドバイス
もしあなたが人形島を訪れることを考えているなら、霊への敬意を忘れないでください。
決して人形を侮辱することなく、静かに立ち去ることが最善です。
さもなければ、人形たちがあなたに何をささやくか……知りたくはないでしょうから。









