舞台での悲劇
それは1888年のことでした。
オーストラリア第2の都市メルボルンの名高い「プリンセス・シアター」では、夜の公演が盛大に行われていました。
演目は『ファウスト』で、その日、悪魔メフィストフェレスを演じたのは、才能ある俳優でした。
彼は開幕から観客を魅了し、その日も完璧な演技を披露していました。
しかし、運命の夜、公演が終わる直前に悲劇が起こったのです。
最後のシーン、俳優は地下に降りるために舞台下のトラップドアから姿を消しました。
観客の喝采と共に、舞台の下へと降りていった瞬間、彼は突如として心臓発作を起こし、その場で命を落としました。
誰もそのことに気づくことなく、舞台上では他の役者たちがカーテンコールに向けて準備を続けていました。
後に、彼の死が知らされた時、誰もが衝撃を受けました。
舞台に現れる俳優の霊
それからというもの、プリンセス・シアターでは奇妙な出来事が相次ぎました。
舞台に立つ役者たちの中には、亡くなった俳優の幽霊が観客席に座っているのを見たと証言する者が出てきました。
彼は19世紀の衣装を身にまとい、じっとステージを見つめているのです。
また、舞台裏でも彼の足音が響くことがあり、照明が勝手に点滅するなどの不可解な現象も報告されています。
さらに奇妙なのは、この俳優の幽霊が目撃されると、その公演は大成功を収めると言われていることです。
彼の霊が現れることは「幸運の前触れ」とされ、俳優たちはむしろ彼の出現を喜ぶことさえあると言います。
「彼がまだここにいるのは、きっと劇場を愛しているからだろう」と、ある役者は語っています。
語り継がれる劇場の伝説
この話は、長い間メルボルンの住民や劇場関係者の間で語り継がれてきました。
現在でも、プリンセス・シアターに訪れる人々の中には、この幽霊に出会うことを期待する者もいます。
幽霊と聞くと恐ろしい存在に思われるかもしれませんが、ここでは彼の存在は歓迎され、劇場の伝統の一部として大切にされています。
もしあなたがメルボルンを訪れる際には、プリンセス・シアターで公演を楽しんでみてください。
もしかしたら、あなたの隣の席にその俳優の幽霊が座っているかもしれません。
彼の姿を見たなら、その公演は間違いなく大成功となることでしょう。









