ヨーロッパの中央に位置するドイツの寒い冬の夜、森の中にぽつんと建つ小さな家では、外の風が「ヒュー」という音を立てて吹き荒れていました。
その小さな家では、一人暮らしの男がビールを飲み終わり、眠りにつこうとしていました。
だが、彼の胸には不安が募っていました。
何かが忍び寄るような、冷たい恐怖を感じていたからです。
夜の恐怖
夜が深まり、男はいつしか眠りに落ちました。
しかし、突然彼は夢の中で息が詰まるような感覚に襲われました。
何か重いものが、彼の胸に圧し掛かっているのです。
彼は体を動かそうとしましたが、体がまるで凍りついたかのように動きません。
暗闇の中で目を開けると、薄暗い影が彼の胸の上に乗っているのが見えました。
それは「ナハトマール」でした。
ドイツの伝承に語られる、夜の悪霊です。
ナハトマールは、眠っている人の胸に乗り、息を詰まらせ、恐ろしい悪夢を引き起こす存在です。
その姿は不気味で、ぼんやりとした人影のように見えましたが、顔はまるで悪夢そのもののような、歪んだ笑みを浮かべていました。
男は叫ぼうとしましたが、声は出ません。
呼吸が苦しくなり、視界がぼやけていきます。
ナハトマールの重さが増し、彼の心臓は早鐘のように打ち始めました。
「逃げなければ…」
男は心の中で叫びましたが、体は動かず、頭の中は恐怖でいっぱいでした。
夜明けと共に消える悪霊
男が絶望に打ちひしがれそうになったその時、外から一筋の朝日が差し込みました。
ナハトマールはその光を嫌がるように、ゆっくりと男の胸から消えていきました。
突然、体の重さが解放され、男は激しく息を吸い込みました。
部屋は静寂に包まれていました。
男はその恐ろしい体験が現実だったのか夢だったのか分からず、冷や汗をかきながらベッドから立ち上がりました。
しかし、胸に残る重苦しい感覚や汗が、その出来事が夢ではなく、ナハトマールによる現実の恐怖だったことを物語っていました。
ナハトマールとは
夜に人々を襲い、睡眠中に悪夢を引き起こします。
この悪霊は、睡眠中の人々に重い圧力を与え、息を詰まらせることで強烈な恐怖を引き起こします。
この現象は、現代の「睡眠麻痺」や「金縛り」と関連づけられることも多く、ドイツの暗い伝説の中でも非常に恐れられています。
もしも夜中に重い圧力を感じたら、それはナハトマールがあなたの元を訪れているのかもしれません…。









